灼熱の太陽の下で。 2019.02掲載

 

・・・ここはどこ?

 

あたしは、目の前に広がる光景に、声も出せずにいた。

なぜなら、目が覚めたら、辺り一面、砂漠に座りこんでいたのだから。

 

目を閉じてもう一度、目を開けてみる。

・・・うん。何も変わらない。

やっぱり、あたしは砂漠の中にいた。

これは否定できない事実。

 

こういう夢みたいなことが、本気で起きているとき。

人って、なにもできないものなんだな、って思った。

映画とかドラマとか。

見ているこっちは「ちがーう!」って、

主人公に突っ込みを入れているけど。

実際、自分がなると、情けないくらいに。

何もできない。

 

ああ、困った。

目が覚めたら、週末のデート用の洋服を買いに行くはずだったのに。

週末の心配どころか。

今自分がどこにいて。どうすればいいのか。

目の前の事実をなんとかしなきゃいけない。

 

あたしは、砂漠の砂の上に座りこんでいた。

ただ何もできないまま、時間だけがすぎようとしている。

そうだ、時間・・・

腕時計を見てみると、していたはずの時計が、止まっていた。

・・・まったく意味なし(涙)

 

空を見上げると、灼熱の太陽がサンサンと光を注いでくる。

長袖の制服でいたあたしは、暑くて仕方なかった。

けどここで脱いだら、めちゃくちゃ日焼けしちゃうし。

着替えもないから、脱げない。

遮るものもないから、じっとしているしかない。

っていうのが、あたしの考え。

 

このままじっとしても仕方ないかもしれない。

でも、もしかしたら。

誰かが。人が通りかかるかもしれない。

それにかけてみたかった。

 

どれくらい時間すぎたのだろうか。

あたしはだんだんぼうっ、としてくることに気づいた。

頭がどんよりと重い。

目も開けられないくらい、なんだか疲れてきた。

このまま、もう。戻れないまま。

死んでしまうのだろうか・・・

あたしは意識が遠のくのを感じた。

 

誰かが遠くで呼んでいる。

誰だかわからない。けれども呼んでいるのは確か。

「・・・おい、しっかりしろ。おい」

意識がくーっと戻ってくるような気がした。

でも瞼が重くてあかない。

「暑い元に長い間いましたから。少し意識が遠い可能性が」

「何度か呼べば目を覚ますかな」

「そのはずです」

誰かが、私の肩を揺さぶっている。

お人形さんのようにあたしは無力だ。

ぐったりした腕と体には、まだ力が入らない。

 

冷たい何かが顔にあたる。

ひんやりとして気持ちがいい。

冷たさに惹かれて、うっすらと目を開けることができた。

瞼をそっと開けてみると、目の前に心配そうに見ている知らない顔。

だれだろう。あたしを見ている人は。

 

「目があいたぞ」

嬉しそうにあたしの顔を見て、喜んでいる。

あ、でもこの人。イケメンだ。

あたしは、こんな超ピンチなときにも関わらず。

イケメンとか思ってしまう自分が、情けなかった。

でも情けなさよりも、力がまだ入らないほうがつらい。

イケメンだけでは、まだあたしにはパワーが戻らないようだ。

 

「回復魔法をもう少しかけ続けてみよう」

「お任せください、勇者様」

ゆ、勇者?

寝ぼけつつも、不覚にもあたしはピクリとしてしまった。

勇者ですって?

思わず言葉に反応してしまった。

 

そのとき、「勇者様」と呼ばれた男性の顔が、

あたしに近づいてきた。

え、何?ずんごい近いんですけど・・・。

あたしは体に力がまだ入らないし。

声もまだ出ない。

 

こんな近くまで、イケメンの顔が近づいてきたら、

正直、拒否れない・・・(汗)

「勇者様」は、あたしにぐっと顔を近づけると、

ぐっと顎が上を向く。

そして彼は、あたしに口づけをした。

 

あいた口から冷たい液体が、流れ込む。

あたしは、ああ。水が飲める。と思った。

それも勇者の口づけのおかげで。

 

もしこの人が勇者だったら、このまま死んでもいい。

そんな風にあたしは思いつつも、また眠りについた・・・<了>